受付でブロックされる営業と突破できる営業の違い|「取り次げません」の一言に勝つトーク術
「今忙しいんで」 「ウチは結構です」 「すみません、取り次げません」
テレアポ経験のある営業なら、こんな風に受付でブロックされた経験ありますよね。受付はテレアポで突破すべき番人、いわば”敵”のように捉えがちです。しかし、実は”受付はよき味方”として位置づけ直すことで、テレアポの成果が大きく変わります。
今回は営業コンタクト時の受付突破テクだけでなく、心の持ち方までをご紹介します。「自分も使えそう」「これ知っとくと強いな」と思っていただけたら嬉しいです。
テレアポでの受付ブロック、突破できてます?
「お電話ありがとうございます、株式会社◯◯でございます」 「お世話になります。私、株式会社JYMの……」 「営業ですか?興味ありません」ガチャッ と、急に冷たく突き離されたことは営業の方なら絶対にあると思います(駆け出し営業の頃は辛いですよね……)。でも、受付でブロックされるのは、あなたの商品が悪いわけでも、能力が低いわけでもありません。
受付の方は「会社を守る門番」という役割を担っているだけ。なので「営業っぽい話し方」をしてしまうと、むしろ逆効果になることもあるんです。営業がやるべきことは、受付の方を”突破”するのではなく、”納得してもらう”ことに尽きます。
受付は敵ではなく「最初の味方」
筆者が営業メンバーにいつも伝えているのは、受付の方を「最初に接する社内の案内人」と位置づけましょうということ。つまり、受付の方に「この電話は担当者に伝える価値がある」という印象操作ができれば、自然と道は開けるんですよね。
少し、相手の立場で考えてみてください。受付の方は毎日何十本もの電話を受けながら、様々な部署にいる担当者につなぐ役割を一手に担っています。つまり、受付の方に取次が必要だと判断してもらえれば、しかるべき担当者につないでいただける。こんなに心強い味方はいないですよね。敵ではなく最初の味方。このマインドセットを常に持つようにすると、接し方も変わってきます。
「突破」より「納得」のための準備
受付を突破するには、実は話し方以前に「話す理由」の設計が重要です。
筆者がよく見る失敗パターンは、「弊社の○○についてご案内のお電話です」みたいな、一方的すぎる伝え方。これだと受付の方も「あ、営業だな」って一瞬で判断しちゃいますよね。
では、どうすればいいのか。「御社の○○の件でお電話しました」と言える状態にするんです。例えば、相手の業界で最近あった変化や、決算情報から読み取れる課題、サイトやSNSで発信している内容などを事前にリサーチして「あなたの会社だからこそ、今この話をしたい」という仮説を持つ。これがあるだけで、受付の方への伝え方も自然と変わります。
受付ブロックを突破する3つの技術

ここからは具体的なテクニックをご紹介します。ただし!、重要な前提ですが「誰でも同じように言えば通じる」魔法の言葉なんて存在しません。営業のテクニックはすべて「自分の型として使えるようになる」ことが重要です。
同じ言葉でも、あなたのキャラ、声のトーン、相手の空気感によって、言い回しや強さを変える必要がある。その結果、「あの人が言うと信頼できる」「なんか感じがいいな」と思っていただけるんです。営業トークは、自身の良さを際立たせる調味料のようなもの。使い方次第で印象が良くも悪くも劇的に変わることを押さえてください。それを踏まえたうえで、3つの技術をご紹介します。
担当者名のリサーチで突破率が変わる
まず最初に押さえておきたいのが、担当者名を事前に特定しておくこと。担当者名を知っているかどうかで、受付の方の対応は明らかに変わります。
なぜかというと、受付の方が「営業電話かどうか」を判断する最大の要素が「担当者名を知っているかどうか」だからです。例えば「採用担当の方におつなぎいただけますか?」と言うと、明らかに営業感が増してますよね。
そうではなく「採用担当の◯◯さんはお手すきでしょうか?」と伝えてみてください。すると、すでに関係性がある方なのかなと、もしみなさんが電話を取る側だとしても思えるのではないでしょうか。では、どうやって担当者名を調べるのか。方法はいくつかあります。
●企業のWebサイト:会社概要や組織図、採用ページをチェック ●SNS(LinkedIn、X):会社名で検索し、社員アカウントを確認 ●過去の名刺やリスト:社内に眠っている過去の接点情報を掘り起こす
もし担当名が分からない場合も、「ちなみに失礼ないように伺いたいのですが、こういった電話はどなた宛にすれば良いですか?」と受付の方への質問を忘れずに。2回目の電話でバイネームで呼び出しをするためです。
枕詞トークで受付の心理的ハードルを下げる
「○○様いらっしゃいますか?」の前に、「なぜこの電話をしているのか」を簡潔に添える。これが枕詞トークです。理由を伝えることで、受付の方の納得感を上げる工夫です。具体例を出しますね。
改善前: 「お世話になっております。株式会社JYMの橋本と申します。エンジニア採用の件でお電話をしたのですが、人事のご担当者様はいらっしゃいますか?」 改善後:「いつもお世話になっております。株式会社JYMの橋本です。採用サイトを拝見したのですが、御社の業界で今後重要になる◯◯の経験がある方を紹介できそうでして。人事部の〇〇様にぜひお伝えできればと思いお電話いたしました。」
あくまでも一例ですが、後者の方が営業っぽさがないように感じませんか? ポイントは相手の業界や状況に触れること。「この業界だと○○が課題になってるじゃないですか」みたいな断定推量を入れると、「あ、うちのこと分かってる人かも」って思ってもらいやすいです。
断られたときの切り返しトーク
そして最後が、断られたときの切り返し。よくある断られ方として「資料だけ送ってください」「今忙しいので」「うちは結構です」がありますよね。ここで「はい、わかりました」って引いてしまうのはもったいないです。
ここで活用できるのが、応酬話法というテクニック。応酬話法とは、顧客のネガティブな発言から会話展開をこちらの意思で行う話法です。
ケース1.「資料だけ送ってください」と言われた場合
営業:ありがとうございます!ぜひお送りさせていただきますね。ちなみに参考までにお聞きしたいのですが、御社が今使っているサービスはどういう点で課題がありますか? お客様:ランニングコストが高くて……。営業:なるほど〜。じゃあ同じ機能があって、月額費用が安くなれば嬉しいですよね。 お客様:もちろん、そうですね。 営業:実は弊社のサービスは今お使いのサービスと同じ機能がありますが費用は安くて〜
この例ではYESセットなどの心理学的アプローチも併用し、顧客課題の深堀りから切り返しを行っています。
ケース2. 「今忙しいので」と言われた場合
営業:そうですよね、御社の業界はこの時期お忙しいですもんね。 お客様:そうそう、ごめんなさいね。 営業:だからこそなんですけど、今御社の業界では○○の対応が急務になってますよね。実は他のお客様も同じことがあったのですが、弊社のサービスを導入後に「とても楽になったよ」と喜んでいただけたことがありまして。 お客様:へー、そうなんですね。 営業:はい。きっと御社のお役に立てるかなと思うので、○日と○日、どちらか5分だけお時間いただけませんか?
他のお客様の事例で安心感を与える例話法を使い、アポイントにつなげようとした例です。このような応酬話法は「心理的な壁を崩す」「対話をつなげる技術」ことを目的としているので、焦っていきなり詰めてはいけません。最終的には相手に選ばせるように切り返しトークをしていきましょう。
受付突破のセンスは属人性にある
さきほどもお伝えした通り、受付突破の本質は技術ではなく属人性です。とにかく試行錯誤を積み重ねることが、受付突破力を育てます。
属人性が重要なのは、「話す空気」「声の印象」「間の使い方」など、非言語の強さが受付突破に大きく影響するからです。これはトークスクリプトだけでは培えないもので、だからこそ、各々で工夫が必要になってくるんです。
ロープレで「伝え方の型」を作る
「属人的なトークって言われても、どうやって見つければいいの?」と思いますよね。ご安心ください。営業の基本であるロープレ(ロールプレイング)を愚直に行えば、属人的なトークスキルの再現性もあがります。
ポイントは「型を作る→慣らす→柔らかく使う」という流れを掴むことです。自分なりのトークスクリプトを考え、ロープレを重ねてとにかく話すことに慣れ、最終的には自分のキャラクターや経験を自然に取り入れて話せるようになりましょう。
最終的には「僕の担当したお客様でこういう方がいて〜」「うちの父も同業でして、こんな愚痴を言っていたのでお気持ちわかります」など、自分自身のキャラクターや個性を生かした型を見つけてみてください。
「感じがいい人」はなぜ受付を突破できるのか?
「この人、なんか受付突破率高いな」という営業が、みなさんの社内にもいませんか? 受付突破はロジックよりも「印象・声・トーン」の勝負なんです。筆者が過去に見てきた「感じがいい人」の共通点には、こんなものがあります。
●「お世話になっております」の言い方がリアル:既存取引先に電話するときの自然な感じで言える ●間の取り方が上手い:相手が喋ってるのに被せて話さない。一拍置く余裕がある ●急いでない感じを出せる:「営業です!」という肩肘張った雰囲気がない
ただし、感じのよさはその人のキャラで大きく変わります。信頼感がありそうだから受付突破できる人もいれば、逆にどこか身近に思える雰囲気があって通してもらいやすい人もいます。自分なりに試行錯誤して、勝ちパターンを確立することが何より重要です。
拒否された日も、学びの宝庫
「100件かけたけど1件もアポが取れなかった」「今日は何やってもダメだ.…..」という日もあるかもしれません。ですが、拒否された日こそ、学びの宝庫だと思いましょう。
例えば、同じ「結構です」というお断りも、受付の方の言い方や雰囲気は微妙に違いますよね。「申し訳ございません、結構です」っていう丁寧な断り方と、「あ、結構でーす」っていうそっけない断り方。もしかしたら前者は「今ニーズがないから本当に不要」で、後者は「営業っぽいから反射的に断った」かもしれないですよね。
自分が話した内容も大切ですが、こうした微妙な違いまでトークログとして記録してください。Excelでもメモでも何でもいいです。「この言い方したら即断られた」「この言い方したら少し話を聞いてもらえた」と記録しておくと、自然と受付突破力も上がっていくものです。失敗を失敗のままにせず、次に活かす。これがプロの姿勢だと思います。
拒否されても折れない、受付対応のメンタル管理術
受付で断られると、誰だってへこみます。ときには怒鳴られることもあり、折れそうになってしまうこともあります。折れずに営業を続けていくためには、自分自身のメンタル管理も重要です。最後に、テレアポで折れないためのマインドセットや考え方もお伝えします。
「断られた数=熟練度」の考え方
今すぐ使える方法が、ゲーミフィケーション思考です。たとえばテレアポはRPGゲームだと考えてみてください。手強いボスキャラと戦うときは、何度もゲームオーバーになりながら攻略法を見つけていきますよね。
テレアポも同じように、断られた数=熟練度と考えて、「10回断られたら1レベルアップ」くらいの感覚で捉えてみてください。断られた数だけ、あなたは受付との会話経験を積んで、成長しているんです。断られることを失敗と思わずに「よし、経験値1ゲット!」と心の中で言うようにすると、不思議と気持ちが楽になります。
成功トークを録音・再生して調子を取り戻す
これも本当におすすめなのですが、自分の成功パターンの音声を録音してください。営業って、調子のいい日と悪い日がありますよね。調子が悪い日は、何を言っても断られる気がする。そういうときは過去の自分の成功トークを聞き直すんです。
すると必ず「あ、俺こんな風に話してたんだ」「このときの声のトーン、めちゃいいじゃん」と気づけます。録音は属人的でありながら、自身の再現性を高めていくためにも重要です。それだけでなく、落ち込んだときは「あのころの俺、めっちゃ頑張ってたな」「なんだ、全然できてるじゃん」と、モチベーションアップにもつながりますよ。
受付突破はスキルと人間味の合わせ技
受付突破のポイントを一言でまとめると、「型と感覚の両立」です。テクニックだけでは通用しない。「印象・空気・人柄」が重要で、属人的な工夫やマインドセットを持つ人が受付を味方にできます。録音で成功パターンを蓄積したり、トークログを残したりと、小さな工夫や観察力でテレアポの成果は大きく左右されます。
筆者もそうでしたが、最初はうまくいかなくて当然です。でも、1つずつ試して、自分なりの型を作っていけば、必ず成果は変わります。失敗しても次がある、というポジティブなマインドを大切に、相手の立場も思いやりながら誠実に向き合えば、きっと花は開きます。