インサイドセールスの成否を分けるトークスクリプトの作り方&今日から使える最強テンプレ

橋本陽介
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筆者が20代の頃、365日寝る間も惜しんで架電に明け暮れたとき、肌身離さずそばに置いていたものがあります。 お守りのように……。

それがトークスクリプトです。

今回は、トークスクリプトの作り方をテンプレと合わせて紹介します。これから自分で作成をしようとしている人はもちろん、上司が作ったスクリプトで成果が出なくてヤキモキしている方、ぜひ、参考にしてみてください。

 

そもそもトークスクリプトは必要なのか?

トークスクリプトは必要か否か。

それはそれは、とても深い問いです。その必要性は、インサイドセールスに関わる全員が理解しておくべきです。

トークスクリプトが特に必要な人とは

まず、どんな人がトークスクリプトを最も必要とするのか。それは、キャリアの浅い人や新人の方。

トークスクリプトは、複数のケースにおいて発生するであろう会話の流れを定型化したもの。架電者は電話口の相手と会話をしながら流れをコントロールし、成約への道筋を組み立て、誘導していくことが求められます。

でも慣れていないうちは、電話口の相手の返答対して、しどろもどろになったり、頭が真っ白になったり……。私も昔はありました……。まずは確実に会話をすることが大切であり、そんな時にトークスクリプトが台本になるんです。

パフォーマンス安定化のために、全員手元に置いておく

私はこれまで20万回以上テレアポをしてきました。振り返れば19万9999回目でも、トークスクリプトを手元に置いていました。

人は一瞬の気の緩みやその時の疲労感によって、言葉が出てこないことがあるんですよね。そうなった時にすぐに立ち戻れるお手本として、トークスクリプトをいつでも見れる状態にしておくことが大切です。

キャリアに関係なく、パフォーマンス安定化のためには全員が手元に置いておくべきでしょう。

組織全体の成果を標準化させる

インサイドセールスは、組織内で1人だけが行うことはあまりないですよね。きっと管理者を含め複数人のチームで行うことが多いでしょう。

そんなとき、トークスクリプトは行動や能力の標準化につながります。さらに、高い成果を出している人のコツや工夫を取り入れることで、チーム全体のレベルUPも期待できます。

 

トークスクリプトの構成要素と具体的なテンプレ

少しでもトークスクリプトの必要性を感じていただけたでしょうか? ここからは、実際にスクリプトを作成したり、ブラッシュアップをしたりする際に役立つ構成ポイントを紹介します。

アポイントまでの段階に応じたトークと、ヒアリング時に抑えるべきトークポイントの2つを抑えておきましょう。

受付からクロージング(アポ取り)までのトークスクリプト

まずは、受付からクロージングまでのトークスクリプトを3段階に分け、ポイントや事例を解析します。

1.受付との会話 インサイドセールスでは、担当者の直通電話番号にかからないことも多いでしょう。そのときに立ちはだかるのが、受付の方。

受付との会話がしっかりしていなければ、担当者への接続率が下がってしまいます。よくあるのが、受付から担当者につないでもらえるだろうと思って、堅苦しい表現で長々とサービスの説明をしてしまい、断られてしまうなんてことも。

担当者につないでもらうための理由を端的に・わかりやすく・理路整然と伝えることが大切なんです。

受付との会話〜担当者と面識がある場合〜

セールス:お世話になっております。株式会社JYMの橋本と申します。 〇〇部の〇〇さんはお手隙でしょうか?

受付:どういったご用件でしょうか?

セールス:〇〇さんとは、以前●●●でご挨拶させていただいており、改めてお話させていただく約束をしていたので、ご連絡させていただきました。

受付との会話〜担当者と面識がない場合〜

セールス:お世話になっております。A社の(仮)サトウと申します。〇〇〇(業務領域)の担当者様はお手隙でしょうか?

受付:どういったご用件でしょうか?

セールス:〇〇〇(業務領域)にて、〇〇(課題)を解決できるピッタリなサービスを展開しています。貴社のWebサイトなどを状況を拝見し、きっと担当者様求められるものですので、ご本人様に取り次いでいただけないでしょうか?(確認いただけないでしょうか?)

2.担当者とのフロントトーク 受付を突破したら、いよいよキーマンの担当者へ。受付のときと同様、端的にわかりやすく目的やメリットを伝えることは変わりません。

そのうえで、相手に合わせたコミュニケーションのために、フロントトークのなかで2、3の質問をしましょう。次の関門であるクロージングへスムーズにつなげるために、相手への理解を深めるのです。

面識がある、顕在〜準顕在層の担当者

セールス:〇〇〇〇の●●●●と申します。先日はセミナーに参加いただき(先程は資料をダウンロードいただき)ありがとうございました。

担当者:あー、どうも。

セールス:より〇〇様に参考になる情報をお届けできればと思い、1つお伺いしたいのですが、〇〇様は普段どんな業務をされていますか?

担当者:えーと、簡単には〇〇〇とか〇〇〇ですね。

セールス:〇〇〇なんですね。セミナーに参加(資料をダウンロード)いただいたなかで、特に興味を持たれた内容とかありますか?

担当者:そういえば、講師の方が途中話していた〇〇〇〇は参考になったかも。

セールス:ホントですか!?まさにそこは弊社が強みとしている部分です。貴社の競合に近い会社様の事例もあるので、詳しくご紹介させてください。

面識がない、潜在層の担当者

セールス:〇〇〇〇の●●●●と申します。〇〇〇(業務領域)の課題を解決できるサービスを展開しています。貴社のWebサイトなどを状況を拝見し、きっとお役に立てるかと思いご連絡しました。

担当者:は、はい……。でも今は大丈夫かな。

セールス:幅広くご支援をさせていただいているので、お力になれることはあるかと思います。ところで〇〇様は普段どんな業務をされていますか?

担当者:んー、〇〇〇〇です。

セールス:ちょうど弊社のサービスが〇〇〇〇の業務改善にも役立つサービスなんです。

3.担当者とのクロージングトーク フロントトークで担当者に興味を持ってもらえたら、いよいよ終盤戦。次はクロージング(アポイント調整)です。大切なのは、アポイントが「何の時間なのか」を、目的・MTG方法・日時などの情報でわかりやすく明示すること。

  • 目的…業界に関するディスカッション、情報提供をする時間、サービス紹介の時間、など
  • MTG方法…オンラインorオフライン
  • 時間…30分、60分…など

ここで1つ注意したいのが、スケジュール調整であり、いきなり自分から翌日や特定の日だけを候補に出してはいけません。バッファを含んだ広い選択肢を提示しましょう。目的や時間は、相手の役職や興味関心度などに合わせて表現を調整するといいでしょう。

セールス:先程ご説明したサービスについて、ディスカッションを踏まえて詳細のご説明をしたいのですが、30分ほどオンラインMTGのお時間をいただけますでしょうか。

担当者:話だけ聞いてみようかな。

セールス:スケジュールですが、今週または来週はいかがでしょうか?お時間については、午前or午後or夕方でご都合にお合わせいたします。

担当者:今週は忙しいから、来週の〇〇曜日の午後でしたら。

 

BANTCHをヒアリングする

ここからは、会話の中でヒアリングすべき重要項目である、BANTCH(バントチャネル)を紹介していきます。

BANTCHとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(ニーズ)、Timeframe(導入時期)、Competitor(競合)、Human resources(人員体制)の頭文字をつなげた言葉。

BANTCHの意味を示した表

BANTCHのヒアリングは、商談に結びつけることが目的ではありません。お客様と自社の商材の親和性や受注確度を測り、後の提案を深める情報であることを覚えておきましょう。

また、いきなりすべての情報を聞くのではなく、インサイドセールスが聞く情報とアポ後にフィールドセールスが聞く情報を区別しておくといいですね。

Budget(予算)のヒアリング ビジネスの場では、関係性が浅い相手に対して、お金の話をオープンに話す人はあまりいませんよね。予算の聞き方にも工夫が必要です。

あからさまに「予算はどれくらいですか?」と聞くのではなく、さりげなく聞くことがポイントです。

  • 弊社のサービスは月額○○円ですか、ご予算感としてはいかがでしょうか?
  • 今どんなサービスを利用していますか? or 比較検討しているサービスはありますか?
  • 現在抱えている課題に対して、どれぐらいのコストがかかっていますか?
  • 現在抱えている課題を解決すると、どれぐらいの利益が見込めますか?

Authority(決裁権)のヒアリング 決裁権は早い段階で確認することで、その後の具体的なアプローチが変わってきます。また、決裁権だけを聞くのではなく、決裁のフローを把握することが大切です。

会話をする中で、「社内で(or 上司に)確認します」という返答の場合は、電話口の担当者に決裁権がない可能性が高いため、覚えておくと良いでしょう。

  • このようなサービス導入について、貴社ではどのようなフローで検討されますか?
  • サービス導入をご検討いただくにあたり、社内決裁がしやすいよう情報や資料をご提供します。〇〇様以外にどのような方が関わっていますでしょうか?
  • よろしければ〇〇様以外の方を含めて、サービスのご説明をさせていただくことも可能です。そのような場合、決裁される方も参加いただけそうでしょうか?

Needs(ニーズ)のヒアリング インサイドセールスでは、顔が見えない、関係性も薄い人と会話をすることがほとんど。そんな人から悩みや求めているもの=ニーズを引き出すのは簡単じゃありません。

それに、お客様自身が課題感を認識し、解決策を模索している顕在的な状態か、課題感があるものの、お客様自身が認識していない潜在的な状態もあります。後者の場合、どう課題感を認識してもらうかが重要です。

  • 弊社のサービスでは、企業様の〇〇領域の課題を解決してきました。他社様の事例も踏まえて、情報提供が可能ですが、いかがでしょうか?
  • 最近、貴社と近い分野・事業の企業様からも問い合わせをいただいていました。その企業様は〇〇のような課題を持っていましたが、貴社ではいかがでしょうか?(問い合わせや資料請求の場合)
  • どういった経緯で、弊社にお問い合わせ(資料請求)いただいたのでしょうか?
  • 弊社サービスのどのような点にご興味いただきましたか?

Timeframe(導入時期)のヒアリング ニーズとセットで確認したいのが、サービスの導入時期。

時期が明確な場合は、導入の可能性も高まりますが、明確になっていないこともあります。そのような場合は、課題感をいつまでに解決することで、どんな影響をもたらせるか。そのためにはいつまでにどのようなスケジュール・フローで導入すると良いか。相手の状況を一緒に整理していくと良いでしょう。

  • サービス導入の時期や目処はお決まりでしょうか?
  • 弊社のサービスを導入いただく企業様だと、平均〇〜〇ヶ月間のプロジェクトで実施するケースが多いようです。スタート時期やスケジュール感は決まっていますか?
  • 〇〇の課題感について、いつ頃までに解決をされたいと考えていますか └その場合だと、〇〇月ぐらいのスタートでしょうか?

Competitor(競合) 電話を切られることなく、こちらの話を一定聞いてもらえ、多少の興味を持っているかも。そんなときは、自分たち以外にも目を向けたいところ。もしかしたら競合他社と比較検討している可能性もあります。

相手がどんな他社の情報を収集しているかによって、導入の選択軸や重視している点が見えてくるため、ぜひ競合情報を聞きましょう。返答内容を分析すると自社の優位性やメリットの伝え方など、アプローチ方法のヒントが見つかるかもしれません。

  • 差し支えなければ、弊社以外に情報収集をしたり、話を聞いている会社様のサービスはありますか?
  • 弊社のサービスを検討いただくお客様のなかには、〇〇社や〇〇社と比較検討するケースがあるようですが、情報収集はされてますか?
  • もし別で比較している会社様のサービスがあれば、違いをお伝えしますが、いかがでしょうか?

Human resources(人員体制) 最後に、忘れてはならないのが人員体制です。

サービス導入のために、社内の誰が窓口となり、どのような立場の人が関わり、どのような意思決定がなされていくのか。組織の体制を把握しておくことで、提案や導入後のコミュニケーションがスムーズにいきやすくなります。

  • サービスの導入では、〇〇様が情報収集から導入、運用までをすべて担当されていくのでしょうか?それとも別の担当者様も関わられますか?
  • 導入前に本プロジェクトに関わる方を対象に、サービスの説明会をさせていただくことも可能です。そのような場合、どのようなお立場の方と何名ぐらい参加されますか?
  • 弊社のサービスを導入いただいている企業様は、窓口・運営担当者含め〇〇名の方が関わるプロジェクトで体制を組んでいます。お客様の場合はどのような人が関わってきそうでしょうか。

 

トークスクリプトの効果を高めるためのポイント

インサイドセールスの成果は、トークスクリプトの内容だけで決まるわけではありません。成果を最大化させるための工夫やテクニックを紹介します。

短時間で興味を惹くために“運命をつくる”

インサイドセールスは、短時間で相手の興味を惹きつけることが大切です。そのときに必要なのが、相手に合ったオンリーワンを伝え、“運命をつくる”ことがポイントです。

具体的には、5w1hを参考にスクリプト・会話を意識しましょう。

「弊社が(Who)、どんな商品を(What)、あなたに(Why you)、今(Why now)ご紹介しているのか」を伝えること。その内容が相手の状況に即したオンリーワンになることで、“あなたと私はピッタリ=運命”と感じてもらえ、短時間で興味を惹きつけることにつながります。

相手に合ったコミュニケーションをする

架電をする際、リードソースによってトークスクリプトの内容は変わってきます。リードソースは、潜在層・準顕在層・顕在層に分けられ、相手の状況に応じて以下のようなコミュニケーションを意識しましょう。

潜在層(課題の認識、サービスへの興味が低い状況)…自社とコミュニケーションをとる、接触するメリットを強烈に伝える

準顕在層(課題を解決したいが自社のサービスへの興味は高くない状況)…相手が知りたいことにコミットし、応えられることを伝える

顕在層(課題解決の意識が高く、自社のサービスの話を聞いてくださる状況)…何を求めているのか、それに対して自社ができることをクリティカルにお伝えする

架電のタイミングとケア

インサイドセールスでは、「資料請求されたら、1秒でも早く即架電する」と言われています。資料請求をしている瞬間はサービスへの興味関心が高く、「今知りたい」の状態に合わせてアプローチをすることは大切。

しかし、早すぎると資料を読んでいない場合もあるためケアが必要です。「まだ資料を読んでない」状況かもしれないなかで、なぜ電話をしているのか。相手の状況をケアしながら話すことが大切です。

コールログ(架電の履歴)をとる

トークスクリプトは一度作って完成ではありません。音声ログやテキストログを積み重ねてモニタリングすることで、効果的な内容、言い回し、分岐などが導き出されていきます。つまり、コールログをとることで、トークスクリプトの見直しや改善点を見つけ出すことができるのです。

加えて、ログをとることで、次のアプローチが明確になったり、フォロー対応もしやすくなるでしょう。

現状に満足せず、定期的なブラッシュを

トークスクリプトは、一度作成して終わりではありません。架電する人、リードソース、サービス内容など、さまざまな状況によって常にブラッシュアップが必要になります。

今、使っているトークスクリプトは本当に適切ですか?

アポがとれない、改善点がわからない、プロの意見を聞きたい……そんなお悩みをお持ちの方はぜひJYMにご相談ください。

橋本陽介
代表取締役

制作会社でインサイドセールスの構築および販売実践。その後広告代理店にて国内大手から、スタートアップまで200社以上のプランニングを手掛け、部門売り上げ倍増などの成果を元に事業責任を歴任。続くSEOコンサルティング会社で広報採用、アフィリエイト事業の責任者を歴任し社外取締役に就任、並びにJYMを設立。

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