「アポ率を上げるには?」と5万回唱える前に!「話法」「リスト」「印象」を見直しましょう

橋本陽介
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「ありがとう」を5万回唱えると奇跡が起きるらしいですが、残念ながらいくら唱えてもアポ率は上がりません。

しかし、ご安心ください。アポ率を上げたいなら奇跡に頼らずとも、「話法×リスト×印象」という3つの変数で上げられます。

どこにボトルネックがあるかを見つけることが、アポ率を高めるポイントです。今回は1,000社以上のアウトバウンド営業を支援してきた筆者自身の経験から、アポ率を上げる具体的な方法をお伝えさせていただきます。

 

 

アポ率の「計算方法」「平均」って?

そもそも、アポ率ってどう計算するの?平均値ってどれぐらい?アポ率UPを深掘りしていく前に、基礎に立ち戻ってみましょう。

アポ率の計算式と基本の定義

アポ率の計算方法はシンプルです。

アポ率(%)= アポ獲得数 ÷ コンタクト数 × 100

例えば、50件電話をかけて2件アポが取れたら、アポ率は4%(2÷50×100)となります。なおコンタクト数ではなく、架電数やリスト数を基準にすることもあります。リードの質やアポを獲得したい業種業態など、KPIに応じて設定するとよいでしょう。

業界平均ってどれくらい?

アポ率は業界や顧客の状態によって大きく異なります。一例として、これまで1,000社以上の営業を支援してきた筆者の経験から割り出したアポ率の平均値は以下の通りです。

リードソース別の平均アポ率を表した表

大事なのは平均より「自分の勝ちパターン」

ただし、平均値は気にしすぎることなく、あくまで参考値として覚えておきましょう。なぜなら担当者・商材・リストの粒度によって、アポに必要な最適解が異なるからです。

まずは今の数字・状況を正確に把握して「どこをどう改善すれば成果が出るか」という最適解を考えることから始めるのがおすすめです。

アポ率は「3つの変数」で決まる

ここまでが一般的なアポ率のお話でしたが、単に架電数を増やせばアポ率が上がるというわけではありません。アポ率をもう少し深い視点で見ていきましょう。

アポ率=話法×リスト×印象

筆者自身が1,000社以上の営業支援をさせていただき気づいたのは、アポ率は「話法 × リスト × 印象」で決まるということです。

● 話法(トークスクリプト): 何を、どんな順番で話すか ● リスト: 誰に電話をかけるか ● 印象: どんな声・トーンで話すか

この3つのうち、どれか1つでもゼロに近いと、他をいくら頑張ってもアポ率は上がりません。逆に言えば、3つとも少しずつ改善すれば、掛け算で成果が出せます。アポ率の増減は決して偶然ではなく、再現性を持って高められる「変数管理のゲーム」だと思っていただき問題ありません。

まずは「改善すべき場所」を見極める

では、まずどこから手をつければいいのか。直近の架電結果を振り返って、以下の3つに当てはまった架電件数を確認してみてください。

● 通話時間が30秒未満ばかり → 話法に問題あり ● 「うちには必要ない」と言われる割合が多い → リストに問題あり ● 「忙しい」など即切りされる → 印象に問題あり

件数が多いところが、自分のボトルネックとなっている箇所です。ちなみに、複数該当する場合は印象→話法→リストの順で改善するのが効率的です。

「やみくもテレアポ」は今日で卒業

みなさんも「とにかく数をこなせ!」と言われた経験があるかもしれません。正直に申し上げると、いくら数をこなしても3つの変数のいずれかに課題がある限り、アポ率を上げるのは難しいです。

話法、リスト、印象という変数の分解こそが改善の第一歩。数をこなすことより、打ち方の精度を上げてアポ率を向上させる発想へ転換しましょう。

 

その話法大丈夫?通話時間短すぎ問題

「お忙しいところ失礼します。〇〇会社の…」  「あ、結構です」  ガチャッ。

テレアポでこんな経験をしたことがある方、お気持ちよく分かります。その原因は、実は第一声・冒頭の話し方にあることが多いです。ここでは通話時間が短くなる原因と対策についてお話しします。

通話30秒未満が多いなら要注意

通話時間が30秒未満のときは、担当者につないでもらえず終話している場合がほとんどなんです。アポイントは、電話先の個人が電話元の個人にアポをあげるCtoCのコミュニケーションに近いといえます。そこで意識したいのが、メラビアンの法則です。

メラビアンの法則とは、人が受け取る情報の影響度を数値化した心理法則のこと。人の印象は「視覚で5割、聴覚で4割、言語で1割」が決まると言われています。

電話の場合は視覚情報が欠ける分、顧客が耳で受け取る印象が先方の判断に大きく影響します。架電時の録音を自分で聴いてみて、どのような印象を受けたか、顧客になりきって聞いてみましょう。

「とりあえず1分」話すことの意義

まず目指したいのが「とりあえず1分話す」こと。つまり、担当者に話を聞いてもらう段階に入った状態です。そのためには枕詞を用いるなど、話題のきっかけを掴むことが大切です。具体的には以下のようなテクニックがあります。

①「釈迦に説法な内容なんですが〜」 「御社の業界って〜じゃないですか?」「この時期は◯◯じゃないですか?」など、顧客のYESを取りに行く際に有効です。

②役職に応じた興味の話題を提供する 電話に応対していただけるお客様の役職によって、興味のある内容は変わります。分かりやすく表で整理してみました。

テレアポ時の役職別の話題例

特徴的なのはコストダウンです。利益を見るのは部の責任者以上が多いため、メンバークラスの方に提案しても刺さらない可能性があります。

相手のミッションによって訴求の内容を変えることで、「この人は自分にとって価値のある情報を提供してくれているんだ」と思ってもらえるようになりましょう。

 

アポ率を変える!話法の「ちょい足し」

普段食べ慣れた食事でも、「ちょい足し」があるだけで、おいしく感じますよね。これはアポでも同じ。聞き慣れた言葉に「ちょい足し」があるだけで、相手の反応が変わるんです。

SPIN話法で相手の「困ってる」に寄り添う

SPIN話法は簡単に言うと、相手の課題を引き出す質問の順番です。

S(状況質問): 「今、〇〇ってどんな感じですか?」 P(問題質問): 「それで何か困ってることありません?」 I(示唆質問): 「もしそのままだと、どうなっちゃいます?」 N(解決質問): 「それが解決したら、どんないいことがありそうですか?」

例えば、人事関連の商材営業で人事の方にお話を聞くときなら、

S:「今、採用ってどれくらいやられてます?」 P:「なかなか良い人が採れないとかありません?」 I:「このまま人手不足が続くと、既存社員の負担も増えちゃいますよね」 N:「もし良い人材が安定的に採用できたら、事業もさらに伸ばせそうですよね」

というふうに相手の「そうそう、それなんだよ!」を引き出せれば、アポ率は格段に上がりま。

ちなみに電話は強制的に時間を拘束してしまうので、効率主義、ロジカルな思考の担当者とは相性がよくありません。そういう場合はいきなりNから入って結論を提示する”逆SPIN”も有効です。相手の職種や性格に合わせて応用できれば上級者といえます。

YESセットで「アポが取れる空気」をつくる

人は「YES」を繰り返すと、次の質問にも「YES」と答えやすくなる心理効果があります。このテクニックはYESセットと呼ばれています。YESセットを上手く利用して、アポが取れる空気を作りましょう。

実践例

●「最近、同業他社さんで〇〇って課題が多いって聞くんですけど、御社でもそういうのってありますか?」→「まあ、ないことはないですね」(YES①) ●「やっぱりそうですよね。その課題、早めに手を打つに越したことはないですよね?」→「まあ、そうですね」(YES②) ●「でしたら、一度その課題を解決する面白い事例をお持ちしますので、15分だけお時間いただけませんか?」→(YESと言いやすい空気が完成)

「とりあえず資料送ります」は封印

「じゃあ資料送っといてください」は、お客様からすると便利な断り文句です。この言葉を鵜呑みにして本当に資料送付だけで終わらせるのはもったいない。以下のように必ず次のアクションに繋げるようにしましょう。

実践例

●「もちろんです!ただ、資料だけだと伝わりづらい部分もあるので、5分だけでもご説明の機会をいただけると嬉しいです」 ●「ありがとうございます!では資料をお送りしますが、せっかくなので御社の状況に合わせてカスタマイズしたいので、一度簡単にお話をお伺いできませんか?」

 

リスト精度がアポ率を決める現実

アポ率を劇的に改善するには、戦略的なリスト作りが重要です。どんなにトークスクリプトを作り込んでも、どれだけ良い商材があろうと、ニーズがない人に営業しても意味がないですよね。 そこで、以下の観点で効果の出るリスト作りを解説します。

  • 「誰にかけているのか?」を見直す習慣をつける
  • 「刺さる属性」を見つけるには?
  • 見込みリストは育てるもの

「誰にかけているのか?」を見直す習慣をつける

リストを作ったり購入する際に「とりあえず大企業」「とりあえず社長」というふうに、ニーズを考慮せずにリストを考えていませんか?曖昧な基準での購入は失敗につながりやすいため、注意が必要です。

大切なのは、リストの粒度や仮説との一致度。リストの企業の規模感、その規模感の企業が抱えている課題の仮説立て、自社の商材ならどう解決しうるかなどを考えると、作るべきリストも変わってくるはずです。

まずは「ターゲット顧客がどのような情報を求めて、どこに集まっているか」を考えてみましょう。例えば、マーケティング担当者向けサービスであれば、マーケティング関連のQAサイトや情報メディアの会員リストなどを検討することで、感度の高いリストを獲得できる可能性が高まります。 他にも以下のようなポイントをチェックしてみてください。

セルフチェックリスト

□ なぜこの会社に電話するのか説明できる □ 相手の業界の基本的な課題を理解している □ 自社商材がその課題をどう解決するか言語化できる □ 過去にアポ/受注した企業との共通点がある

3つ以上チェックがつかないなら、リストの作り方を見直した方がいいかもしれません。

「刺さる属性」を見つけるには?

そのうえで自社の商材が刺さる属性を見つけるには、過去の成功事例を分析することです。アポや商談になった会社の共通点を逆算し、「こういう属性には刺さる」という再現性を発見すると、似たような課題を持った企業がリストアップできます。

ここで役立つのが、”媒体理論”という考え方です。これはリストの優先順位を「変わらないもの(属性)」と「変わるもの(アクション)」の掛け算で考える手法です。

● 変わらないもの(属性): 企業の規模、業種、担当者の役職など ● 変わるもの(アクション): 「資料請求してくれた」「セミナーに参加した」といったお客様の行動

例えば、過去に受注した企業が「従業員50-100名の製造業(属性)」で、かつ「自社セミナーに参加していた(アクション)」という共通点があれば、それがあなたの会社の「勝ちパターン」となりうるかもしれません。この掛け算を意識してリストの優先順位を決定すると、架電効率は劇的に上がります。

見込みリストは育てるもの

広告やSEO経由で問い合わせをいただくお客様は自社商材に明らかに興味を持っている、いわゆる”顕在層”です。しかし、顕在層ではない企業も宝の山であることを忘れてはいけません。

●「今は予算がないけど、来期には…」 ●「ちょうど他社と契約したばかりで…」 ●「もうちょっと会社が大きくなったら…」

こうした企業は3ヶ月後、6ヶ月後にあらためてコンタクトを取れば、状況が変わっていることも珍しくありません。その間にメールマガジンやセミナー、架電などで接点を保ち続けていれば、顕在層となる可能性も十分にあります。これがナーチャリングの考え方の基本です(ナーチャリングというと難しく聞こえますが、要は「ちゃんと覚えててフォローする」ことが重要です)。

以下のようなリストをお持ちでしたら、営業リストとしてぜひ活用してみてください。

● 自社セミナーや共催セミナーの参加者 ● 過去に失注したけれど、感触が良かったお客様 ● メールマガジンを開封してくれている読者

ちなみに、アポが取れやすい順番もあって、大体こんな感じです。

1. 自社セミナーのアンケート回答者 2. 共催セミナーのアンケート回答者 3. 展示会で名刺交換し、話が盛り上がった人 4. メールマガジンの開封者

 

しかし、印象で9割決まる説

ここまで色々語ってきた要素も全部重要ですが、現場あるあるだなと感じるのは最終的に印象が9割ということ。具体的には以下のようなポイントができているかどうかが、アポ率にも影響します。

  • 第一声に「感情」が乗ってるか?
  • 語尾を伸ばさず、語尾で笑う (^^)
  • 声色でアポ率が上がるのは科学で証明

第一声に「感情」が乗ってるか?

共感いただける方も多いかと思いますが、「お世話になっております」の一言に感情が乗ってるかどうかでお客様の反応は全然異なります。例えば受付窓口がある企業の場合、受付の方も営業電話に慣れています。「新規の方はお断りしておりまして……」など担当者へつないでもらうことさえ難しい場合もありますよね。

そんなときは既存の取引先をイメージして、冒頭の「お世話になっております」の声色を変えるテクニックがあります。たとえば「こんにちは、お世話になっております!」と”いつもの感じ”で言うと、すでになんらかの取引がある会社の人のような印象に聞こえないでしょうか。実際に、受付からつないでもらえる可能性も上がります。

このように最初の一言の言い方や感情を変えるだけで、「あ、この人は担当者につないでよいな」と思わせられるテクニックに化けるんです。

語尾を伸ばさず、語尾で笑う (^^)

「〜なんですけどぉ〜」「〜と思うんですがぁ〜」と語尾を伸ばすと、頼りなく聞こえてしまいます。話し方の印象をあげるためには「〜なんですよ(にっこり)」と言い切る、語尾で笑顔を表現するといった技法も重要です。

筆者がおすすめしている技法が笑声(えごえ)です。笑声とは、口角を上げて1トーン上の声で話す技法のこと。

● 声のトーンが自然に上がる ● 口角が上がって滑舌が良くなる ● 表情筋が動いて声に温かみが出る

と、いったメリットがあります。CAさんの機内アナウンスをイメージしてもらえば分かりやすいですね。

声色でアポ率が上がるのは科学が証明

「声色だけでそんなに印象って変わる?」と思った方もいるかもしれませんが、声の与える印象の変化は科学的にも証明されています。 例えば高い声・早口で話すよりも、やや低い声・中くらいの速度で話すほうが「信頼感が持てる」「好感度が持てる」印象に感じられるという論文もあります。(出典:発話速度と声の高さが特性推論に及ぼす影響

先ほどの笑声も優秀なアポインターほど使いこなしています。笑声が苦手な人や、やれてるつもりでも録音を聞くと「なんか暗いな……」と感じる人は、スクリプトを画面に出して読んでいる状態の人が多いです。まずは騙されたと思って試してみてください。きっと違いを実感できるはず。

 

アポ率UPは日々の地味な改善から

ここまで読んでくださった方に最後にお伝えしたいのは、アポ率を一撃で上げるノウハウはありません。ただし、話法×リスト×印象を日々地味に改善していくことで、再現性をもってアポ率は上げられます。

  • 今日ダメでも、昨日より1個だけ変える
  • 数字に疲れたら「なぜ断られたか」を考える
  • 営業には正解はない。でも最適解はつくれる

このように少しずつ改善を続けていくことで、自分なりの勝ちパターンをつくっていけば、あなただけの大きな武器になります。

もし「もっと営業の極意を知りたい」あるいは「一緒に営業を改善してほしい」と思ったら、ぜひ私のXまでDMをください。ご相談に乗らせていただきます。

橋本陽介
代表取締役

制作会社でインサイドセールスの構築および販売実践。その後広告代理店にて国内大手から、スタートアップまで200社以上のプランニングを手掛け、部門売り上げ倍増などの成果を元に事業責任を歴任。続くSEOコンサルティング会社で広報採用、アフィリエイト事業の責任者を歴任し社外取締役に就任、並びにJYMを設立。

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