「実は、他社さんも……」が刺さる!インサイドセールスで第三者話法を自然に使いこなす極意
「弊社のサービスは〜」「このソリューションによって〜」と、自社商材の話ばかりしてたら全然刺さらなかった……。営業初心者の頃にはあるあるですよね。一方で、「いや〜ウチにはちょっと」と断られたとき、他社の事例を引き合いに出したら、急に「え、そうなんですか?」と興味を持ってくれた経験もよくあるかと思います。
他社の事例をさりげなく用いる「第三者話法」は、自分のセールストークに信頼を加える頼もしい技術です。ですが「効果は分かるけど胡散臭くなりがちで難しい」と感じる営業も多いですよね。わかります、その感覚。
第三者話法は単なるテンプレ的な話法ではなく、事例の伝え方・空気感・相手との距離感など、属人的な調整が肝になります。この記事では第三者話法を自分の言葉として自然に使いこなすためのポイントをお伝えします。
第三者話法とは「他社の成功例で説得する」営業テク
第三者話法とは、第三者の成果や事例・意見を述べることで、エピソードに説得力をもたせる手法のことです。営業トーク中に「他の企業様も…」「○○業界でも…」という言い回しをうまく使えると、営業っぽさを抑えつつ相手の共感と納得感を引き出せます。
第三者話法の基本構造(主語・背景・事例・現在)
では、どんな順序で話せば納得感を引き出せるのか? 第三者話法では主語、背景、事例、現在という、最低限押さえておきたい構成要素があります。
1.主語 誰の話をしているか明確にする。「同業」「類似規模」「同じ職種の方」など、相手との共通項があるように設定すると有効です。 2.背景 どんな状況・課題を抱えていたのかを語りますが、この「課題」が相手にとって「自分ごと化」できるかがポイント。「あ、うちもそうかも」と思える状況を描写することで、事例への関心が高まります。 3.事例 短く、刺さるように、どういう対応・施策をとったのかを説明してください。改善の変化(Before→After)があるととても良いです。長々と説明しすぎると、相手が飽きるので注意しましょう。 4.現在 その会社が今どうなっているのかまで話すことで、リアリティと信ぴょう性が上がります。業務や職場にどんな変化があったかなど、お客様からヒアリングしたエピソードも添えられるとなおよいです。
話し方次第で「胡散臭さ」から「説得力」に変わる
とはいえ、この型をそのままテンプレ的に話してしまうと、割とすぐバレます。スクリプトとして覚えるだけでは嘘っぽさが拭えません。
「実は先週、同じ業界の担当者さんと話したんですけど」と体験ベースのトーンを加えたり、「導入前はランニングコストも今より高かったみたいで……あ、それはまた別の他社様の話でした」とちょっと間違えたふりをしてみたりなど、リアリティを持たせる技術が必要です。
第三者話法が効くタイミング/効かないタイミング
ここまでお伝えしておきながらではありますが、第三者話法は万能ではありません。以下のように、効くタイミングと効かないタイミングがあります。
▼効くタイミング ●相手が半信半疑なとき ●比較検討中のとき ●「本当に効果あるの?」って疑ってるとき ▼効かないタイミング ●断固拒否してるとき ●興味関心ゼロのとき ●完全に時間がないとき
効かないタイミングで第三者話法を試しても、却って逆効果になり得ます。TPOの見極めが大切です。またリアリティをもたせるために、使いすぎにも注意しましょう。
第三者話法を自分流に落とし込むための3つの工夫
第三者話法は型を覚えればいいわけではありません。一番重要なのは「属人的な自分の型として使えるようになる」ことです。
事例トークに血が通っていると、相手の共感・納得が圧倒的に変わりますし、自分自身が現場で培ってきた経験こそが他の営業との差別化ポイントになります。ここからは第三者話法を自分の言葉で語れるようにするポイントを紹介します。
事例の主語を相手に近づける
第三者話法では、他社の話をいかに自分ごと化してもらうかが肝となります。したがって、事例の主語を相手の立場に近づけるようにしてください。
ポイントは「某大手」「他の会社さん」など抽象的な言葉ではなく、できる限り相手に近い主語で語ること。業界・企業規模・職種・課題など、相手との類似点を事前に準備しておきましょう。例えば、人事部の方に電話するなら「同じ人事部の方で」、製造業の方なら「同じ製造業の企業様で」というだけで、相手に与える印象は変わります。
言い回しは自分の口癖で再構築
用意されたスクリプト通りに読むと、聞き手に「押しつけられてる感」が出てしまいます。あるあるですが「なんか嘘っぽいな」と、お客様も感じてしまうんですよね。同じ事例を語る場合でも「うちのお客様でも実際に…」「僕らのチームでよく聞くのが…」など、自分の言葉にアレンジするだけで自然な説得力が出ます。恥ずかしながら筆者も営業を始めたころはスクリプトを棒読みして滑った経験があります。
「他の企業様でも導入されておりまして大変ご好評をいただいております。具体的には導入後3ヶ月で業務効率が向上しコスト削減にも成功していまして」
……と、自分ではすらすらと成果を述べたつもりでしたが、お客様の耳には何も残っていませんでした。「あ、営業トークね」と判断された瞬間に、興味がなくなってしまいます。自分の言葉で話すように意識すれば、反応が全然変わります。あなただけの型を見つけるために、試行錯誤することが重要です。
事例に「感情」を乗せる
言い回しにも通じますが、事例トークにほんの少し自分の感情をのせることで、会話に人感の温度感、温かみが出ます。
例えば「最初は不安が大きかったらしいんですが、いまはすごく喜んでもらえてて」という、単なる数字や実績で終わらせないトークはおすすめです。「成功した嬉しさ」「相手企業の前向きな変化」などを語ることで、信頼と共感を引き出すストーリートークになり、営業っぽさを抑えられます。
感情をのせると、お客様も「あ、この人は本当にうちのことを考えてるんだな」と思いやすくなってくれるはずです。
第三者話法が刺さる相手と刺さらない相手

繰り返しになりますが、第三者話法は「誰にでも刺さる魔法のトーク」ではないです。第三者話法の効果は、相手の立場・心理状態・温度感に大きく左右されるからこそ、「使うかどうかの見極め」にもセンスが問われます。ここでは刺さりやすい相手・刺さらない相手の特徴をご紹介します。
刺さりやすい相手①:競合を気にしている企業
自社の立ち位置を気にしていたり、他社の動向に敏感だったりする企業様は、「他社でも導入されていて……」という話が刺さりやすいです。特に、新規事業担当者やベンチャー企業の意思決定者は、競合との比較ベースで検討する場合が多い印象です。
競合を気にされるお客様は「安心・納得・正当化の感情」があります。「他の会社もやってるなら、うちもやっても大丈夫だろう(安心)」「あの会社がやってるなら良いサービスなんだろうな(納得)」「このままでは競合に遅れを取ってしまう(正当化)」という心理を把握し、営業トークに活かすのがおすすめです。
刺さりやすい相手②:課題は感じているが動けていない人
課題意識はあるものの、最初の一歩が踏み出せていない人には、第三者の事例が背中を押す材料になります。
「他社も最初は悩んでましたけど〜」という文脈で、行動のハードルを下げるトークが刺さります。SPIN話法でいうと、示唆質問(I)から解決質問(N)あたりと連動させると、より効果的です。 ※SPIN話法:相手の課題を引き出すための質問順を工夫する話法。S(状況質問)、P(問題質問)、I(示唆質問)、N(解決質問)の順に進める。
例えば、以下のような流れで第三者話法と組み合わせられます。
●「この状況が続くと、現場の負荷が増えて離職リスクも出てきますよね(示唆質問)」
●「実は同じような状況だった企業様が、○○を導入されて、今では残業時間が30%削減できてるんです(第三者話法)」
●「御社でも同じような効果が期待できそうですよね(解決質問)」
刺さりにくい相手:既存のやり方に強い自信を持っている層
一方で「うちはうち。他社は関係ない」と考えている経営者やベテラン層には、テンプレ的な事例トークは逆効果になることもあります。経営層ではなく、現場からの反発があり諦めているというパターンも考えられますね。
ただ、こういった構えが強い相手でも、「共通課題」や「構造的な背景」から入ると受け入れられやすいです。例えば「他のお客様でも実はまったく同じ課題があったんです。その会社では経営層と現場の意見が対立して、離職者も出ちゃったみたいで。でも、○○○○な進め方をおすすめしたところ、現場の方もすぐ馴染んでいただけたんですよ」という感じ。
こうしたエピソードこそ属人的な工夫が光るもの。自分らしい型を見つけて、ここぞという場面で切り込んでいくことが重要です。
よくある第三者話法の失敗例とその処方箋
ここでは、第三者話法の失敗パターンあるあるを紹介します。
主語が大きすぎて逆に不信を招く
「多くの会社でも〜」「いろんなお客様に〜」というデカすぎる主語は、「本当に?」「どこの会社よ?」と不信感を招きます。
「同じ業界で」「30名規模の企業で」「同じ人事部の方で」など、可能な範囲で具体化をしてください。業界トレンドに絡めて「最近他社様からもよく聞くのですが〜」と話すのもおすすめです。他社のエピソードをいかに自分ごととして感じてもらえるかが重要、ということを忘れないでください。
事例が古すぎて響かない
「去年導入いただいた会社でこういうことがあって……」など、時期が古い話だと、新鮮みがなくリアリティが失われてしまいます。
「つい先週」など、常に1〜2つ最新のストックを持てるよう、情報更新の習慣が重要です。たとえば、営業チームで毎朝「今週使える最新事例」をチームで共有するなど、各人の経験を共有できる体制づくりも大切です。
事例の紹介だけで終わってしまう
「実際○○社でも導入されてまして……」と言って終わると、相手は「ふーん。で、何の話?」となりがちです。「その方も最初は○○に悩まれてて…」「御社でも似たようなケースってありますか?」など、トークを「相手に返す」設計にするよう意識してください。
営業:先週、同じ業界の企業様で、展示会の名刺活用に課題を感じてらっしゃった方がいて。その企業様にはうちのサービスを導入いただけたのですが、御社だと名刺はどのように活用されていますか?お客様:実はあまり活用できてなくてね。
営業:もしかしたら◯◯という課題をお持ちだったりします?
お客様:そうそう!よく分かりましたね!
営業:実はその企業様も同じで〜
というふうに、必ず相手に質問を返しましょう。
「他社の話」を自分の言葉に変える意識を
営業は「話す内容」より「話し方」が問われる場面が多いんですよね。第三者話法も言い回しの妙が重要で、自分の中で事例を消化して話せるようになると、一気に成果が上がるんです。
・テクニックだけでなく、「印象・空気・人柄」が効く ・属人的な工夫やマインドセットを持つ人が”事例を味方にできる” ・小さな工夫や観察力が、成果を左右する
第三者話法を活用するポイントを押さえて、ぜひ営業トークで活かせるようになりましょう!