BANT情報、集めることが目的になってない?営業定番フレームワークのポイントは「聞き方」
「最近、業者の企業様は〇〇のような課題を持っていまして、貴社ではどうですか?」
「そういった課題解決にどれぐらい予算をかけていますか?」
営業のフレームワークである「BANT(バント)」情報。情報を無意識に、なんとなく聞いていませんか?目的や状況に合わせた聞き方、活用はできていますか?
今、改めて知っておきたい、BANTの役割や活用法、引き出し方をご紹介します。
営業の定番フレームワーク「BANT」って
BANTは、B=予算(Budget)、A=決裁者(Authority)、N=ニーズ(Need)、T=導入時期(Timeframe)の頭文字を組み合わせた言葉です。
営業活動におけるヒアリングのフレームワークであり、各項目を把握することでリード(見込み顧客)の状況を明確化し、自社サービスとの親和性を把握したり、受注率を高めたりすることにつながります。インサイドセールスでは、アポ獲得後にフィールドセールスへ引渡し、案件化へつなげるための重要な情報となります。それぞれの項目の詳細やヒアリングのポイントを見ていきましょう。
B(Budget)=予算
予算(Budget)は、顧客が、サービスや商材を導入するために設定している予算です。他の条件がマッチしていても、予算が合っていなければ導入は難しくなります。一方、予算がわかれば提案内容が明確になるのです。 予算は、信頼関係ができていない段階では聞き出しにくく、「予算はいくらですか?」とストレートに聞いても教えてくれません。
また、導入意志が高い状態では、予算が明確に設定されているケースが多いですが、導入意志が低い状態では予算額が明確に設定されていないこともあります。リードとの関係性や状況に応じて聞き方を工夫しましょう。
・弊社のサービスは月額○○円ですか、ご予算感としてはいかがでしょうか?
・今どんなサービスを利用していますか? or 比較検討しているサービスはありますか?
・こういったサービスや商材を過去に導入されたことありますか?導入していた時は、具体的にどんなサービスですか?
・現在抱えている課題に対して、どれぐらいのコストがかかっていますか?
・現在抱えている課題を解決すると、どれぐらいの利益が見込めますか?
・もしも導入される場合、社内ではどのくらいの投資感覚で検討されることが多いですか?
A(Authority)=決裁者・決裁フロー
サービス導入の際の決裁者です。社内で誰が導入の決定権を握っているのか、決裁はどのような流れで進むのか。それらを把握することで、アプローチする相手か明確になり、効率的な営業活動につながります。 企業によっては、金額によって決済者やフローが変わる場合があるため、注意しましょう。
会話をしている相手が決済者ではない場合、どうやって決裁者と接触するか。いつ、どのような形でアプローチができるのか。など、フローを聞くことがポイントです。
・このようなサービス導入について、貴社ではどのようなフローで検討されますか?
・サービス導入をご検討いただくにあたり、社内決裁がしやすいよう情報や資料をご提供します。〇〇様以外にどのような方が関わっていますでしょうか?
・よろしければ〇〇様以外の方を含めて、サービスのご説明をさせていただくことも可能です。そのような場合、決裁される方も参加いただけそうでしょうか?
N(Need)=ニーズ
ニーズは、サービス・商材導入の必要性やその度合いを表しています。 多くの場合は、何かしらの課題感があり、その課題解決のためにサービスや商材導入します。顧客自身に一定の課題感はあるがサービスの必要性を感じていない状態や、顧客自身が課題感を認識しサービスの必要性を感じている状態もあります。表面的なニーズだけでなく、背景にある課題感を深堀りすることで、アプローチが明確になるでしょう。
加えて、課題感や必要性をどの範囲で感じているのかも重要です。組織全体で感じているのか、担当者個人で感じているのかによっても、アプローチの優先度や提案方法が変わってきます。
・弊社のサービスでは、〇〇領域の課題を解決してきました。他社様の事例も踏まえて、情報提供が可能ですが、いかがでしょうか?
・最近、貴社と近い分野・事業の企業様からも問い合わせをいただいていました。その企業様は〇〇のような課題を持っていましたが、貴社ではいかがでしょうか?
(問い合わせや資料請求の場合) ・どういった経緯で、弊社にお問い合わせ(資料請求)いただいたのでしょうか?
・弊社サービスのどのような点にご興味いただきましたか?
T(Timeframe)=導入時期
サービス導入を検討している時期、導入が見込まれる時期を表します。 導入時期が明確になることで、アプローチのタイミングや優先度が明確になり、効率的な営業活動をすることにつながります。
導入時期が明確な場合は、競合よりも優位なアプローチを。時期が不明確な場合や時間的余裕がある場合は、優先度を低くしたり、タイミングに合わせてナーチャリングをしていくことが大切です。
一方、“時期感は変わりやすい”ことも覚えておきましょう。企業では年度末や組織体制の変更などによって、当初予定していたことかは変わることも少なくありません。時期感の背景にも目を向け、定期的なコミュニケーションを通じて状況を把握するようにしましょう。
・サービス導入の時期や目処はお決まりでしょうか?
・弊社のサービスを導入いただく企業様だと、平均〇〜〇ヶ月間のプロジェクトで実施するケースが多いようです。スタート時期やスケジュール感は決まっていますか?
・〇〇の課題感について、いつ頃までに解決をされたいと考えていますか? └その場合だと、〇〇月ぐらいのスタートでしょうか?
「BANTを埋める営業」は、もう古い?
BANTは昔からあるフレームワークですが、決して時代遅れではなく、現在の営業でも有効です。大切なことは状況に合わせて、ヒアリングをしていくことです。
情報を埋めるのではなく、相手に合わせる
近年のインサイドセールスでは、1to1のコミュニケーションが重要視されています。そのため、誰に対しても、一辺倒に聞くことは有効ではありません。
一辺倒に聞いて、情報を埋めるのではなく、相手の状況に合わせて、ヒアリングをすることを意識しましょう。
ステータス状況に合わせて聞き方を変えよう
相手の状況に合わせて、どう聞いていくか。たとえば、検討フェーズに至っていない方に予算を聞いても有効ではありません。まずは、相手がどういうステータス状況かを見極めるようにしましょう。
弊社では、ニーズに合わせ、ステータスを4段階に分けています。
cold low…課題を把握していない cold hi…課題を把握しているがサービスの導入意識はない warm…サービス導入意識はあるものの、積極的に探しておらず、時期なども明確でない hot…サービス導入は決めており、具体的にサービスの選定をしている
予算を聞く場合の例として、それぞれのステータスに合わせて、以下のように聞き方を変えることが有効です。
cold low、cold hi…近しい分野の課題解決には、どんなサービス(どれぐらいの予算感のサービス)を導入していますか? warm…課題解決のために、予算をかけることは考えていますか?かけるとすれば、どれぐらいの予算が現実的ですか? hot…他社比較でどれぐらいの予算を見込んでいますか?
BANT情報はどの順番で聞く?
BANT情報は聞く順番が重要です。文字の並び通りに、予算から……はNGですよ。 BANTは、Nニーズ→T=導入時期→A=決裁者→B=予算の順番で聞くと良いでしょう。
ニーズは、先方のステータス状況を把握するのに重要な情報であり、会話の入り口になるもの。このあと、どのようなコミュニケーションをすべきか、そのヒントになります。
導入時期は、サービス導入に対する課題の緊急度に紐づくものです。キーマンとなる決済者やフローを確認し、最後に現実的な予算を聞くことで、自然な会話の流れになるでしょう。
一方、ニーズが顕在化していない方に導入時期を聞いても答えが返って来ない場合があるため、方針が変わる・プロジェクトの進め方が変わるタイミングなどを聞くことで、先々の参考にしましょう。
BANT情報を聞くタイミングは?
次に、BANTを聞くタイミングも重要です。主には、以下のいずれかのタイミングが良いでしょう。
・アポイントを取得した後 ・アポイントの打診に対して拒否をされ、再架電をするとき
これらのタイミングは、相手のおおよそのステータス状況がわかっている時です。相手の状況がわかっていれば、自社サービスとの親和性を踏まえた会話ができ、BANT情報が聞きやすくなるのです。
BANT情報が活きるタイミングとメリット
BANT情報がひととおり聞けた! いえいえ、集めて終わりじゃないですよ。BANT情報はこう活かすんです。
クロージング前の判断材料になる
予算、ニーズ、決済者、導入時期が揃い、BANT情報を満たしたタイミングは、クロージングする目安と判断できます。逆に、ヒアリングをしたが情報が出てこなかった、情報が薄いなどの場合は、ステータス状況を見直し、今後のアプローチを再検討していきましょう。
結果、無駄なアプローチや商談の長期化、失注リスクを軽減し、効率的な営業活動ができるのです。
見込みの温度感をチームで共有できる
BANT情報をヒアリングすることで、顧客のステータス状況や商談状況が明確化になり、営業管理をしやすくなります。
それらの情報をチーム内で共有することで、属人的にならず、営業活動を標準化することにつながるのです。
“その後”のナーチャリングにも使える
リードの状況が明確になれば、今後の打ち手も見えてきますね。
今は可能性が低いMQLの状態でも、ニーズや導入時期が見えていることで、今後のナーチャリング次第でアポ獲得(SQL)へとつながる可能性が見えてきます。
メールやセミナー、などマーケティング施策によってつながりを継続し、理解度・解像度をあげる。状況によってはトライアルで自社サービスを利用いただき、課題解決イメージを具体化させるなど、さまざまな施策ができます。
ヒアリングの決め手は共感と対話
ここまで、BANT情報の基礎、聞き方、活かし方などを伝えてきました。さらに一歩踏み込だ、ヒアリングのポイントをお伝えします。
あなたのために、の精神で枕詞を添える
BANT情報は、顧客の状況に合わせて、メリットをしっかり伝えたうえで、ヒアリングすることが重要です。 「あなたのための」「次回(今後)のための」に関連する枕詞と良いでしょう。 たとえば、
・hot…よりよい提案をするために ・worm…あなたに合った情報や資料をお届けするために ・cold…今後、あなたが必要になるであろう情報を届けるために
聞くことや情報を埋めことが目的になると、一辺倒なヒアリングになり、BANTを引き出すことができなくなります。相手のために、配慮を重ねることを意識しましょう。
相手に共感し、対話をしよう
インサイドセールスでは、無意識に架電側の意図を押し付ける会話が発生しやすくなります。「アポください」「資料送りますよ」など。一方的な会話になり、対話にならないことがあるんですよね。
そこで、相手に共感をすることが大切です。
「そうですよね」「それって〇〇ですよね」など、相手の言葉や状況へ共感することが、ヒアリング時のベースになります。その際、業界知識があることで、共感内容も具体的になり、相手との距離もグッと近づくのです。
BANTを「育てる」つもりで聞いてみよう
インサイドセールスでは、BANT情報のヒアリングは重要ですが、必ずしも詳細情報を収集できるわけではありません。相手の状況によって変わります。しかし、将来的には、契約につながる大切な情報です。
今後活かすことも踏まえて、ヒアリングをしていきましょう。
BANT情報のヒアリングを含めた、インサイドセールスに課題を抱えている方はぜひ、JYMにご相談ください。