不自然な「イエス取り」で自爆してない?自然な会話でアポ率を上げるイエスセット話法の極意
「人手不足でお忙しいですよね?」 「はい」 「そうですよね、でも外注せずにコスト削減したいですよね?」 「……そうですけど、なんの話ですかこれ?」
小さなイエスから大きなイエスを勝ち取るイエスセット話法。この話を聞いた新人が無理にイエスを言わせようとして、こんな感じで逆に顧客の機嫌を損ねてしまうことって、営業の現場だとあるあるですよね。
「ネットのテンプレ通りにやってるのに、なぜ?」と首を傾げている方もいるかもしれません。実はそれ、イエスの取り方がただの尋問になっているからなんです。
顧客に自然と気持ちよく「イエス」と言ってもらうにはどうすればいいのでしょうか。これまで1,000社以上の営業支援をしてきた筆者の経験から、現場のリアルな話を交えてお伝えしていきます。
イエスセット話法とは?テレアポで使える心理テクニック
イエスセット話法とは、会話の中で小さなイエス(同意)を複数回相手に言わせることで、最終的な提案に対しても大きなイエスをもらいやすくする心理学的な話法のことです。営業の世界では、フロントトークの定番テクニックとして広く知られています。
ただし、これは「相手をコントロールするテクニック」ではありません。短い同意を重ねることで共感を生み、顧客が自分の悩みを打ち明けやすくなる「心理的安全性の土台づくり」が本来の役割だと、筆者は考えています。
恋愛でもよく似たことが言えます。初めてデートをした相手と「この映画おもしろかったよね」「このお店、雰囲気いいよね」と小さな共感が積み重なると、「この人とは気が合うな」「また会いたいな」と思えませんか? 営業のイエス取りも、これとまったく同じ構造なんです。
小さなイエスを重ねて大きなイエスを引き出すラポール形成の仕組み
小さなイエスを重ねると、大きなイエスが返ってきやすくなる理由には、一貫性の原理という心理作用が働いているといわれています。人は一度示した態度や言動と、その後の行動を一致させようとする傾向があるんです。
これがいわゆるラポール(信頼関係)形成につながっていきます。ラポールとは心理療法の世界で使われている言葉で、相手との間に橋を架けるような関係性のことです。
たとえば営業の現場では、セールスの質問に対して顧客が何度も同意しているうちに「この人は自分のことや会社の課題を理解してくれているな」という感覚になります(=ラポール形成)。そうすると最終的に「この商材も自分に必要なものだ」という心理が顧客の中で生まれやすくなるわけです。
心理学を悪用したような「不自然なイエス取り」は逆効果
こう言うと簡単に聞こえるかもしれませんが、前提として、ただ顧客にイエスと言ってもらえばいいわけではありません。イエスが欲しいあまりに不自然な質問をしてしまうと、顧客に必ず見抜かれます。そうなるとラポール形成どころか、強烈な警戒心を生んでしまいます。
現場でイエス取りが失敗する理由は、テクニックの表面だけを真似た「浅いイエス取り」が横行しているからです。イエスセット話法は正しい使い方を知らないと自分を傷つけるかもしれない、諸刃の剣だと思っておいたほうがいいかもしれません。
マニュアル通りで撃沈する、尋問型イエスセットの悲劇
一番やってはいけないのが、マニュアル通りのイエス取りです。よくある失敗パターンをご紹介します。
「今日は暑いですね」「あ、はい」の無意味さ
セールス:お忙しいところお時間いただきありがとうございます!今日は本当に暑いですね〜!
顧客:あ、はい。
セールス:こういう日って外回りの営業さんも大変ですよね?
顧客:まあ……そうですね。
新人セールスがやりがちなのが、こうした意味のないイエス取りです。確かに相手は「イエス」と答えてくれるんですが、天気の話も「お忙しいですよね」という前フリも、本来話すべき本筋とまったく関係ありません。
かくいう筆者も、新卒の頃は「イエスを取れば取るほどいい」と勘違いして、関係のない話題を3つも4つも振っていました。今思い返すと、「この営業、本題に入る気あるのか?」と思わせるだけで、はっきり言って時間の無駄でした。
顧客は「言わされている感」に気づくと心を閉ざす
もうひとつ気をつけたい点として、不自然なイエス取りは相手にもばれます。
セールス:人材採用って、最近どこも苦戦してますよね?
顧客:そうですね。
セールス:採用コストも上がってますし、辞めちゃう人も多いですよね?
顧客:まあ、はい。
セールス:そういう課題、御社でもありますよね?
顧客:……あの、何の話ですか?
こんな会話をした/聞いた覚えがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。意味もなくイエスを取ろうとすると、顧客は「あ、これ営業トークだな」「セールスのテクニックに乗せられてるな」と疑念を抱きます。
アポ率を劇的に上げるイエスセット話法の2つの型
では、どうすれば自然なイエス取りができるのか? 筆者がチーム育成のときによく伝えているのは、イエスセット話法を以下の2パターンに分けて考えることです。
- ①アポの確率を跳ね上げる「特定の質問」を投げかける
- ②80%の確率でイエスとなる「断定推量」を多用する
①アポの確率を跳ね上げる「特定の質問」を投げかける
ひとつ目は、ある特定の質問にイエスがもらえた瞬間、アポの確率がドカンと跳ね上がるタイプの質問を投げる方法です。
つまり、特定の質問にイエスが返ってきた顧客=確度が高いという勝ちパターンを事前に仮説立てておき、顧客のイエスが出たら一気にアポ打診まで持っていく設計です。
具体例で見ていきましょう。たとえば、マーケティングオートメーション(MAツール)のアウトバウンドを想像してみてください。
あなたは名刺情報のフォローを効率化するサービスを売っているとします。このとき、「展示会後のお礼メールを、営業さんが一通一通手作業で個別配信している企業」がアポ確度が高いというフラグが事前に分かっているとしましょう。
そうしたら、フロントトークでこんな質問を仕込んでおくわけです。
セールス:御社の場合だと、展示会で取得した名刺情報へのお礼メールの送付って、営業の方が個別配信されてますか?
顧客:そうですね、うちは営業がそれぞれやってますね。
セールス:よかったです!実は、このタイミングでお声がけしたのって、同じ用に個別配信されている企業様が弊社のツールを試しに使ってみたら、生産性が◯倍向上した事例がございまして。もしかすると御社でも同じパフォーマンスを出せるかもしれないと思いご連絡差し上げたんです。
顧客:へー、そうなんですね。
セールス:よかったらこのお話だけでもお伝えさせていただきたいのですが、◯◯日か◯◯日でお時間いただけないでしょうか?
こんな感じで「個別配信されてますか?」という質問に対するたった1つのイエスで、違和感なく一気にアポ打診まで展開できます。
まずは「イエス=自社商材で解決できる課題を抱えている可能性が高い」と判定できる質問を、商材ごとに仮説立ててみてください。それだけで、フロントトークの精度がガラッと変わるはずです。
②80%の確率でイエスとなる「断定推量」を多用する
ふたつ目のパターンが、筆者が現場で一番おすすめしている「断定推量」のテクニックです。
断定推量とは「〜ですか?」という質問の形ではなく「〜じゃないですか」という推量の形で投げかけること。筆者の経験上、間違っていなければ80%の確率でイエスを引き出せますし、顧客との距離を劇的に縮めるためにもかなり使える方法です。
というのも、「〜ですか?」という質問形式だと、相手はイエス/ノーどちらを答えてもいい立場になりますが、断定推量にすると「同意するのが自然な空気」が生まれるんですよね。断定推量は心理的に、相手に軽い同意を促す効果があるわけです。
「〜じゃないですか」を多用してイエスの導線を作る
実際の現場で使える断定推量の例を、いくつか紹介しますね。
セールス:この業界って、やっぱり他の業界と比べると離職率って高いじゃないですか。
顧客:そうですね。
セールス:ですよね〜。それで採用の母集団形成で苦労されてることも多いと他社様からも聞いたんですが、御社もそうですか?
顧客:そうですね。
セールス:実はそうした現場に対して、我々の方で◯◯という解消策を実施できた実績がありまして……
こんな感じで、相手が納得感を持ってイエスと答えられるように促すのが基本形となります。商談のなかで2〜3回挟むことで、小さなイエスどりをしていくのがポイントです。
使いやすい断定推量のバリエーションも紹介しますので、商材や業界に応じて使い分けてみてください。
- 「この時期って◯◯じゃないですか」
- 「この業界って◯◯じゃないですか」
- 「こういうサービスって、慎重に決めないと後戻りできないじゃないですか」
- 「現場で使えるって思ってもらわないと浸透しないじゃないですか」
- 「成果を上げるために◯◯がポイントになってくるじゃないですか」
業界知識と組み合わせて「わかってる感」を演出する
さきほどの例でも少し出ましたが、断定推量の効果を発揮するには業界知識と組み合わせるのが有効です。
[例1]
セールス:人材業界って、特にこの時期は新卒採用の振り返りと中途のスタートが重なって、現場のオペレーションがめちゃくちゃ煩雑になるじゃないですか。
顧客:そうなんですよ、まさに今その状態で……。
[例2]
セールス:SaaSのサービスって、現場で使えるって思ってもらわないと、せっかく導入しても浸透しないじゃないですか。
顧客:本当そうなんですよね、それで前の導入失敗してて……。
こんな感じで業界知識と組み合わせることで、「この人、うちの状況をわかってるな」という権威づけ+安心感を相手に与えられます。
業界知識がないまま断定推量だけ使うと、的はずれなことを言ったときにリカバリーが難しくなります。だからリストを作る段階で「この業界はどんな課題を抱えているか」を仮説立てておくのがめちゃくちゃ重要です。
推量を外すことを恐れない
「でも、そんなの個社で事情が違うし、外れたらどうしよう……」という気持ちもわかります。でも、外れたら外れたで全然OKです。
セールス:この業界って、最近ペーパーレス化が進んでるじゃないですか?
顧客:ああ、他社はそうかもですけどうちは全然紙ベースですね。
セールス:あ、そうなんですね!じゃあ逆に、紙の管理で何かお困りごとってあったりします?
こんなふうに、会話を広げる糸口にすればいいんです。むしろ外す→深掘りの流れのほうが、自然に顧客の課題を引き出しやすいこともあります。
だからこそ無難な質問をして逃げるよりも、推量を外すことを恐れずに積極的にイエス取りを仕掛けにいくことが大切です。
よくある質問:イエスセット話法の実践の壁
Q. 何回くらいイエスを引き出せばアポにつながりますか? A. 2〜3回程度で十分です。やりすぎると「イエス取りされてる感」が出てしまい逆効果になることも。イエスが取れたらアポ確度が高くなる質問を事前に考えたうえで展開するのが、理想的な流れです。
Q. イエスではなくNOと答えられてしまった場合はどうすればいいですか? A. 問題ありません。「あ、そうなんですね!じゃあ◯◯ですか?」と即座に会話を切り替えて、深掘りの糸口にしてしまいましょう。NOをもらった瞬間こそ、むしろ相手のリアルな状況を聞き出せるチャンスです。
Q. BtoBのテレアポでもイエスセット話法は効果がありますか? A. もちろんあります。ただ、BtoBの場合はBtoCと比べて顧客の契約状況や課題感が事前に見抜きづらいので、断定推量に使う業界知識の精度が成果を分けます。リストを作る段階での仮説立てを丁寧にやることが、BtoBでイエスセット話法を活かす最大のコツです。
Q. イエス・ジャスト話法ってなんですか? A. 相手の言葉を受け止めたうえで「ちょうど(just)◯◯について〜」と切り返す話法のこと。応酬話法のひとつとして紹介されることが多いですね。イエスセット法が「イエス取り重ね」なのに対して、こちらは「相手の言葉に乗っかって展開する」イメージです。
Q. イエス・ソーザット話法ってなんですか? A. 「そうですよね、だからこそ〜」という形で相手の発言を肯定しつつ、提案に繋げる話法です。NOから始まる会話の切り返しでよく使われるので、応酬話法を学ぶ際にセットで覚えておくと役立ちます。
イエスセット話法はテクニックではなく、顧客への「理解と愛」
イエスセット話法は結局のところ、相手を無理やりコントロールする魔法のテクニックではありません。事前に業界や相手の悩みを想像して「きっとこうですよね?」と寄り添うための手段であり、これは「愛」だと筆者は思っています。
まずは表面的なテクニックに溺れることなく、顧客理解を深めた上での「断定推量」を使いこなせるようになることを目指しましょう。
不自然なイエス取りから卒業したいという営業の方は、ぜひ私たちといっしょに働いてみませんか? 現場で泥臭く磨き上げてきたノウハウをお伝えできると思います。気になった方は、筆者のSNSアカウントまで、お気軽にDMください!